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温泉統計

「2018年度第1回温泉まちづくり研究会」講演記録をアップしました



  

【講演】海外プロモーションの現状と温泉地に期待される取り組み

日本政府観光局(JNTO)地域プロモーション連携室長 
広瀬 正彦 氏 


■海外事務所を7ケ所新設してプロモーション力を強化

 JNTOの海外現地事務所は現在20ケ所ありますが、そのうちの7ケ所が昨年1年間で新設されました。私が出向した当初は170名だった人員もこの1年で300人を超え、海外に向けた日本のプロモーションを一層強化しています(図-1)。
 プロモーションは宣伝だけではなく、情報戦略室という部署を使い、しっかりしたマーケティングに基づいて行っています。今まではブロガーや旅行会社の招聘などが多く、現地の旅行博に出展して旅行パンフレットを配るといった取り組みを続けてきましたが、昨今はビッグデータの解析を含めたデジタルマーケティングに注力するようになり、この数ヶ月で取り組みが急速に変わってきたと言えます(図-2)。

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図-1 日本政府観光局の概要

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図-2 JNTOの主要事業

 世界の観光動向に目を向けると、国際観光客到着数は2030年に18億人に達し、そのうちの3割がアジア地域を旅行すると予測されています(図-3)。このため、アジアの中心にある日本が外国人を誘致し、その消費額を地域の活性化に活用することで、地域の経済力を補填するというのが政府の構想です。
 ところが、日本は観光がGDPに寄与する割合などについては、まだまだ世界水準には追いついていないというのが現状です(図-4)。このギャップを埋めるため、国土交通省と観光庁のみならず、「全省庁で横断的にできることはすべてやる」という安倍首相のもとで、3回目の観光立国宣言が行われました。
 日本を訪れる外国人観光客は、2003年のビジット・ジャパン・キャンペーン開始から10年かけて2013年に目標の1,000万人を達成しました。その後は急速に増加しており、数年間でその倍の2,000万人を突破し、2017年は2,869万人となりました。今年に入ってからも15%以上の伸びをキープしており、菅官房長官も「2020年の4,000万人は視野に入った」と発言しています。

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図-3 世界の旅行市場

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図-4 世界の観光産業と日本

 そうした中、2016年に観光先進国に向けた「明日の日本を支える観光ビジョン」、2017年には新たな観光立国推進基本計画が策定され、具体的な目標がさらに追加されました。ビジット・ジャパンに代表されるこれまでの事業は、日本を訪れる外国人観光客数にフォーカスした傾向が強かったのですが、より、地域の経済活性化に貢献をするという観点も重視し、消費額やリピーターの数を増やすことで地域経済への貢献を目指すとしています。
 つい先日、「観光ビジョンの実現に向けたアクション・プログラム2018」が発表されました。基本骨格は昨年のアクション・プログラムと変わりませんが、新たに変更された部分をご紹介したいと思います。
 数値目標は皆さんもよくご存知だと思いますが、下に書かれている3つの柱のテーマが昨年とは異なります(図-5)。1つ目の「観光資源の保存と活用のレベルアップ」は、国立公園や文化財の活用などをさらに推進するというものです。3つ目に、私どもの組織(JNTO)の大胆な改革というテーマが掲げられています。
 具体的には、今、全国に約900ケ所あるJNTO認定の観光案内所を今年度中に1,000ケ所以上に増やす施策をはじめ、インバウンド誘致のターゲットの見直しや、そのターゲットに対してどのような消費活動をしてもらうかを考慮した、JNTOによるDMOへのコンサルティングの強化といった施策も挙げられています。このほか、外国人にとってわかりやすい品質認証制度が日本でも必要ではという議論も出ており、今後のプロモーションにどう活用していくかなどの課題や地域づくりへのサポート等も強化していく予定です。

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図-5 数値目標と新たな3つの柱(アクションプログラム2018)

■ゴールデンルート以外の地域に行く外国人が半数以上に

 続いて、外国人旅行者に関するデータを紹介します。現在、日本を訪れる外国人旅行者の8割以上が東アジア・東南アジアから訪れていますが、伸び率を見ると欧米豪の地域も順調に伸びていると思います(図-6)。
 問題は需要がゴールデンルートに集中しているということです。ちなみに日本全体が2020年に4,000万人を目標としているのに対し、東京都は2,000万人と非常に高い目標を立てていますが、国としては地域活性化という課題もあり、今はゴールデンルートだけでなく、その他の地域のコンテンツを強く発信するプロモーションに軸足が移ってきています(図-7)。

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図-6 訪日外国人旅行者数と発地

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図-7 訪日外国人旅行者の宿泊地

 旅行形態については、国・地域を問わず団体旅行やパッケージツアーは少なくなり、2017年は3分の2以上が個別手配で占められています。性年齢別で見ると、近年は女性観光客が増加しており、2011年の51.3%に対して、2017年は55.8%となっています。女性の中でも40歳未満の増加が顕著ですが、最近は男性においても40歳未満のシェアが伸びており、今後のターゲット設定の参考にしていただければと思います。
 滞在期間については、2016年までは長期化にあったトレンドが、2017年は少し短めの傾向に転じています。泊数が減れば大きく消費額も減るので、滞在をいかに長くするかは大きな課題となっています。
 リピーターの割合は国・地域によって大きく異なります。リピーターが増えている市場は中国、タイ、台湾、香港などで、初訪日客が増えている市場は英国、インド、カナダ、米国、フランス、シンガポールなどです。国・地域によって滞在期間も異なり、おしなべてアジアは約1週間以内ですが、欧米豪は平均10日以上なので、比較的消費額の多い欧米豪の市場をどれだけ取り込めるかが課題になってきております。
 「モノ消費からコト消費へ」と言われますが、訪日外国人の旅行消費額を見ると、買物代が全体の40%弱を占めるということで、今もモノ消費に依存している状態です。しかし、いずれはこのシェアも縮小すると考えられます。それを補完していく意味においても、どうやって宿泊や飲食などにより多くのお金を落としてもらうかを考える必要があります。
 なお、日本政府は爆買いが全盛の時代だった2015年の一人あたりの訪日外国人旅行消費額17万6,000円をもとに、2020年には一人当たり20万円、2030年に25万円という目標を立てています。今は人数が伸びているので消費総額が4兆円を超えたものの、2016年、2017年の一人当たりの消費額は減っており、我々としては非常に危機感を覚えています(図-8)。

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-8 訪日外国人の費目別旅行消費額

 そうした中でインバウンドの人流は、大きく地方に向いてきたといえます。我々の推計によれば、訪問回数が2回以上の外国人旅行者はゴールデンルート以外の地域に行く割合が52%以上に達しています。
 それに伴い、地方の投資も伸びています。宿泊業の建築物工事予定額は2012年の1,121億円に対して、2017年は9,431億円と、8.4倍の伸びを見せました(図-9、10)。国内以外の資本も含まれますが、受け入れは全体的に改善されてきていると言えます。ゴールデンルートよりも地方のほうが、宿泊先の確保もしやすいことも、地方への人流を促進する要因になってくると思います。

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図-9 地方への投資の波及

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図-10 地方への人の流れと投資

 我々は都道府県別の外国人延べ宿泊者数の上位構成比を発表しており、ご存知の方も多いと思います。地域によって旅行者の国・地域の割合はかなり違いますが、一つ注意いただきたいと思うことがあります。
 地域で外国人を誘致しようという場合、都道府県別の外国人延べ宿泊者数の上位構成比の表と日本全体に来ている外国人の国・地域別の円グラフで施策を練り、「この国の人が近くの県にもたくさん来ているから、呼び込めるのでは」という比較的安易なターゲッティングに基づくプロモーションが多いと感じます。数だけを見るのではなく、外国人旅行者が訪れることで、その地域の経済に有益な効果を及ぼしているかを確認することが必要だと思います。
 宿泊施設については、和室中心の旅館を利用する人の割合は、アジアより欧米からの旅行者が多いです。アジアからの旅行者の旅館利用率は2015年以降、低下傾向にありますが、旅行を終えて帰国する外国人のアンケート結果を見ると、「旅館に泊まってみたかった」というアジアの人々が多く見られます。また、同じく帰国時のアンケートでは「1泊2食を経験したかった」という意見も多く見られます。
 JNTOの海外事務所の所長たちは、泊食分離の方が外国人旅行者に受け入れられるのではと考えていたのですが、こうしたアンケート結果では、国によっては1泊2食の方がいいという意見も多く見られます。このため、必ずしも泊食分離がいいとは言えず、ここはしっかりとした戦略に基づく対応の必要性があると思います。
 先ほどもお話ししたように、今のまま訪日外国人旅行者数が伸び続けても、2020年、2030年に政府が掲げている消費額目標達成は非常に厳しいと言えます(図-11)。このままの伸び率が続き、2020年に4,000万人という数字を達成しても、消費額は目標の8兆円に対して約1.8兆円足りません。また、2030年も6,000万人という目標が達成したとしても、やはり6兆円弱が足りないと推算され、これをどうするかが課題です。

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図-11 政府目標達成のための不安要素

 そこで観光庁が掲げているのが、これら3つの方策です(図-12)。1つ目に「地方誘客による平均泊数のアップ」とあります。滞在を延ばしていただくための魅力作りをまず行い、続いてコト消費にお金を落とす国に注力すべきではということで、滞在泊数が長く一人当たりの消費額も高い欧米豪に比重をかけ、ターゲットを絞り直すという作業を今、行っています。
 その根拠となるのが、国別に見た他国での旅行消費支出の割合です。コト消費を示す娯楽の項目で比較すると、日本は1.1%と低いのに対し、アメリカ、ドイツ、フランスといった国は娯楽の割合が圧倒的に多いです。日本は受け入れの面でもこの部分で非常に立ち後れており、着地型商品に代表されるようなオプショナルツアーをどう増やすか、ナイトライフエコノミーへの取り組みなど、まだまだやるべきことは多いといえます。

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図-12 不足分を詰めるための3つの方策

■宿泊業者など地域の現場の声を聞きたい
 
 JNTOのプロモーションの特性と基本的な方針を図-13~15にお示ししました。
また、JNTOが行うビジット・ジャパン事業のカウンターパートナーは、地域では運輸局や広域・地域DMOなどです。各地域の運輸局は、「ビジット・ジャパン地方連携事業」という取り組みも行っています(図-16)。

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図-13 JNTOのプロモーション特性

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図-14 JNTOのプロモーション方針

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図-15 JNTOのプロモーション方針

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図-16 JNTOが取り組む地方連携事業

 地域のニーズやコンテンツ、ルートなどをインバウンド向けに発信するお手伝いを我々は行っています。我々がオブザーバーなどで参加する、地域のステークホルダーが集まる会議がよく開かれます。この会議は自治体、観光関係団体や民間業界団体の参加者が多く、旅館、観光施設、飲食施設など温泉まちづくりに直接携わっている地域の方々の参加が少なく、その方々の意見を吸い上げる形式になっていない会議が多く見受けられます。
 ですからこの研究会にいらっしゃるような方達の「この地域ではこんなものを売った方がいいのでは」という声がもっと届くといいのではと思います。また、このほかに運輸局が行う地域のブロック戦略会議もあり、受け入れ態勢整備やターゲットなどについて議論されています。
 当然、宿泊関係者や地域づくりの関係者などからいろいろな要望があるはずなのに、実際には上がってこないという現状があります。私もかつてアウトバウンドを送客していた立場から「生々しい現状のレポートがあるのでは?」と期待しつつも、実際には、具体的な案件が出ない現状で残念に感じています。
 また、地域にターゲットとなる国・地域のプロモーションにかなりの予算をかけて実施していますが、実際には地域のニーズと合致しないことも問題点として指摘されています。国のプロモーションは海外事務所の意向で決まることが多いのですが、「外国人に自分の地域のこういうところを見てほしい」「外国の旅行会社を呼ぶなら、こういうところに行って、こういう体験をしてほしい」といった地域のニーズが汲み取れないことも多く、その部分の修正を始めようとしているところです。
 一方、地域の何を海外にプロモーションしていくかという議論でよくあるのが、地域のリーダー達が集まって議論を重ねた結果、自分たちが売りたいもの、見てもらいたいものが先行し、外国人のニーズとギャップが起きることです。
 私も地域を回っていてそういうケースをよく目にします。コンテンツがあるというだけでなく、そのコンテンツを好んで来るような外国人はどういう国・地域の人なのか、そのコンテンツは単独で人を呼べるのか、まで考えていただきたいという話をしています。例えば長野県山ノ内町にあるスノーモンキーのようにキラーコンテンツが一つ見つかると、それだけでまずは地域を売り込み、その後で周辺のお勧めコンテンツを売り込むという方法も可能だと思います。
 日本では、温泉地とスキー場は切っても切れない関係にあります。今、外国人旅行者はニセコや白馬に集中していますが、より幅広く、温泉地に近いスキー場に誘致しようということで、「スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会」が立ち上がりました。私もメンバーに入っており、今年で2年目になります。
 桜や紅葉で誘致するのは宿泊キャパシティー的に限界があるので、それ以外の時期にどう呼び込むかが課題です。食事、温泉など滞在中のコンテンツが充実していることから、スノーリゾートは今後数字を上げる上で重要な存在だと思います。実際、スノーリゾートに対するニーズは伸び率も高く、スノーリゾートに来た方は通常の観光より消費額が多いということで、地域活性化にも効果的だと思います。

■JNTOの重点事業戦略~4つの柱

 JNTOは国の施策に紐づいて4つの柱から構成される重点事業戦略を展開しています。それぞれの取り組みについて紹介します(図-17)。

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図-17 JNTOの重点事業戦略

1)「日本の無認識層」にアプローチするグローバルキャンペーン

 欧米豪市場の主要国に対し、アジアで行きたい国について行われた調査によると、航空券代はほとんど変わらないにもかかわらず、日本のランキングは低く、別の国・地域が上位に入っています(図-18)。これはJNTOが誘致競争に負けていることを意味します。
 さらにこの市場(欧米豪)には、長期滞在して多くの額を消費する可能性がありながら、まだ日本を旅行先として認知していない「無認識層」が多数存在することがわかりました。こうした層はコト消費への意欲が強いこともわかっており、アプローチが必須であるといえます。

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図-18 欧米豪からアジア地域へ

 図-19はラグジュアリートラベル市場の規模感を示した円グラフです。欧米豪5カ国の海外旅行旅行者のうち、100万円以上の高額な消費を行っている旅行者の割合が13.4%を占めるのに対して、この層の日本における獲得シェアはわずか1.3%にとどまっています。
 今までは、こうした客層を多く獲得するという発想が欠けていたという反省も含め、スタートしたのが欧米豪市場の無認識層に日本の魅力を発信するグローバルキャンペーンです(図-20)。ターゲットは事前調査を元に、3年に1回以上観光目的のロングホール旅行を行い、ロングホール旅行の消費単価は、航空券を除き20万円以上というスクリーニング条件を設けています。
 このキャンペーンに伴って日本の魅力を紹介する2分30秒の動画も作ったところ、この3ヶ月でビュー数は1億を超え、その40%が動画を最後まで見たという結果が出ています。

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図19 ラグジュアリートラベル市場の規模

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図-20 2020年に向けたグローバルキャンペーン

2)デジタルマーケティング室でビッグデータを収集

 74億人の世界の人口のうち、30億人以上がスマートフォンを持っており、多い場合には1日に9時間以上インターネットに接続しています。旅行のカスタマージャーニーにおいて、デジタルマーケティングが担う役割は認知から訪問・リピートまで横串を刺すように、すべての段階に関わっています。
 しかし、残念ながら観光プロモーションにおけるデジタル予算の比率は、日本の場合、5%と非常に低いのが現状です。これに対してアメリカは63%、インドネシアは40%と、かけるコストの割合が全く違うのです(図-21)。これでは情報戦略に勝てません。

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図-21 デジタル予算の比較

 ちなみに日本の残りの予算の95%は地図を作ったり、特に紙媒体の制作が多いのですが、今は中国の観光客などに地図を渡しても、全く見ずにスマホに頼るケースが多いです。旅行者の行動についても、85%が旅行先に到着してから何をするか決めており、50%がスマートフォンで行動を決めているという調査結果も出ています。
 こうした状況を背景に、私達も今、デジタルマーケティングに力を入れています。訪日旅行前から旅行後までのカスタマージャーニーの中で接触される情報によってどの国のどういう層が、どのタイミングで日本の何を見に来ているかが把握できるようになりました(図-22)。そのサイトに広告を出すといったリマーケティングの仕組みを活用することで、訪日意欲を増幅させる効果があります。

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図-22 目的に合わせたデータ分析

 ただし、こうした取り組みにはビッグデータの収集が不可欠ですが、自治体や民間企業が単体で行うには非常にお金がかかるのです。そこで、JNTOでは数億円の予算をかけ、このたび初めてビッグデータを収集する事業を始めました。
 データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)というプラットフォームを構築し、そこにJNTOのウェブサイトやスマホアプリの訪問者データを集めます。JNTO内部のサイトやアプリだけでなく、賛助会員などのデータも合わせて一元的に収集します(図-23)。
 こうして蓄積したデータを統合・分析して、有償にはなりますが、比較的低廉な価格で民間企業や自治体に提供する予定です。地域の方々にとって、インバウンドのマーケティングがしやすい環境を作り出し、各種プロモーションや誘致活動に活用いただきたいと考えています。

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図-23 データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)の構築

3)地域連携プロモーション室は地域向け相談窓口を設置

 私が所属する地域連携プロモーション室は、2017年9月27日に新たに設置された部署です。海外に向けたプロモーションについて、地方自治体やDMOとの連携を強化するために作られました(図-24)。
 地域の皆さんが求める情報の提供や、地域の取り組み事例を収集し、成功事例などを共有するための「地域相談窓口」という窓口を設けると共に、各地域専属の担当者を配置しました。従来には見られなかった国と地域のプロモーションの融合を図り、精度の高い取り組みで地域に外国人を呼び込むしくみを作ろうとしています。
 国も広域観光周遊ルートの中にあるDMOなどが中心になって行う、「広域周遊観光促進のための新たな観光地域支援事業」を予算額18億円の新規事業としてスタートしました。
 この事業の一環として、「連絡調整会議」が設けられています。その地域の各種DMOと観光庁及び地方運輸局、JNTOと有識者、関係事業者が参加し、広域周遊観光の促進に向けて連携を図ることを目指す会議です。
 関係事業者として宿泊施設の協会などが参加していますが、先ほどお話ししたビジット・ジャパン地方連携事業の会議と同様、単体の宿泊施設をはじめ、民間企業が参加していないこともあり、その地域で今必要なことなど、臨場感のある話が出てこないと感じます。単に、という報告会に終わっているので、もったいないと感じています。

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図-24 地方自治体・DMOとの連携強化/地域プロモーション連携室

4)ラグビー・オリパラ観光戦略推進室の設置

 日本では2019年にラグビーワールドカップ(RWC)、2020年に東京にてオリンピック・パラリンピックが開催されます。これに伴い今年2月に新設されたのが、RWC2019/Tokyo2020観光戦略推進室です(図-25.26)。
 この部署では、RWCやオリパラに海外の人を誘致するというより、これらをきっかけに、海外の方に日本を認知していただき、訪日観光ブランドを確立することを目指しています。
 RWCに関しては、実際に観戦に来る方は限られた数ですが、滞在期間が長く、消費額も多いので、そういう方達にインフルエンサーになっていただき、日本のいいところを発信してもらうためにどうすればいいか、各開催地から人を集めてこれから会議を行う予定です。具体的にはこういう試合があったらどういう人が来るのか、次の対戦まで何日間あいていて、その間に誘導可能な地域はどこか、といったことをラグビーチームが検討しています。
 その翌年が東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会です。基本的に開催中は、国内の旅行者の動きが止まります。終了後のレガシーをどう作っていくかが重要ですが、世界最大の大会とあって、メディアも世界最大の人数が訪れます。この方々にどういう情報を発信してもらうかが重要とあって、例えばメディアセンターでどういうものを配ったらいいのか、地域の方々に提供していただくことも含めて議論しているところです。

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図-25 ラグビーワールドカップ2019のプロモーション

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図-26 東京オリパラ2020のプロモーション

■訪日外国人の意見を吸い上げるオンライン・コミュニティ

 最後にデジタルマーケティングの一環として、我々が始めた新しいマーケティング支援サービス「ジャパン・トラベル・オンライン・コミュニティ(JTOC)」を紹介します。訪日旅行者を対象としたオンライン・コミュニティで、現在欧米豪の旅行者や日本在住の外国人を中心に200名以上が参加しています(図-27)。
 参加者にとっては訪日旅行について自由に情報交換できる場となり、我々にとっては、ここで参加者が発したコメントを分析することで、訪日旅行のニーズや実態をきめ細かく効果的に把握することができます。
 コミュニティを通じて、我々から「日本旅行の予算はいくら?」など特定のテーマについてアンケートをとったり、「家族で行くなら日本のどこがいい?」など人気投票を行うこともできます。そこで寄せられた意見をマーケット調査に活用し、地域のプロモーションにも役立てていきたいと考えています。

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図-27 ジャパン・トラベル・オンライン・コミュニティ(JTOC)

 ちなみに、旅行消費額が少ない国ほど、モノ消費の比率が高く、旅行消費額が多い国は、コト消費の占める割合が大きいことがわかってきました。後者は単に観光という目的だけでなく、日本に来ることで自分の人生にどういう影響があるのかまで考えています。
 JTOCで「これまでの日本旅行で好きな旅行は?」というテーマで意見を募ったところ、写真のような朱塗りの回廊が続く旅館について、コメントが寄せられました(図-28)。中国の方はこの手前で写真を撮りたいとコメントするのに対して、欧米豪の方はその先に何があるのか、時間がかかってもいいから一番奥に行ってみたいというコメントしています。このように、一つのコンテンツについて、国・地域によってまったく見方が変わるので、そうした視点からも、地域の強みや弱みを発見できればと思います。

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図-28 好きな日本旅行は ?





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